2月の星空
星空の巡りは春へ
星の巡りは春へ SCW気象予報を睨んでいると、日付が変わる頃には全天を覆っていた雲はどうやらとれるらしい よく考えたら日付が変わると3月。文字通りの春となった 覆っていた雲が消えたものの、ぼやっとした靄はそのまま。春霞なのだろう しかし普段は見逃す星空を見ることができた 上の写真は西天から天頂をを見上げたもの。地上付近は靄が立ちこめている まず、右端のナトリウムランプが照らすところにひときわ明るく輝くのは木星。赤く見えるのは街灯照明のせいだ 左の山のシルエット上にあるのがおおいぬ座の1等星シリウス。山稜の上に輝くのがこいぬ座の1等星プロキオン。「シリウス」-「プロキオン」を結んだ1辺を基準にして右に目をやるとオリオン座の1等星ベテルギウスが輝く。これで冬の大三角の完成だ オリオン座は東の空に昇る時にはベラトリクスから登場する。西天に沈む時には名残惜しげにベテルギウスを残して、いやいやをするように沈む。オリオン座が西天に沈む写真は、考えてみたらなかなか撮る機会が無い さて、ふたご座の中には火星が侵入して、カストル、ポルックスとともにまるで三つ子星のようになっている。ふたご座の左にはかに座の散開星団M44プレセペ星団が見える。その上には「ししの大鎌」と、しし座の1等星レグルスが青白い光を放っている 冬の星座を見送っていると、星空の巡りはすでに春がやってきていることを教えられた夜だった ---------------------------------------------------- 14mm、ISO800、f2.0、15秒、マニュアルWB、LEE SP-31 ソフト №1、Raw 高感度NRはoff、長秒時NRはon、赤道儀で恒星追尾撮影、美濃平野部 SONY α7RM5 + FE 14mm F1.8 GM 2025年03月01日00時40分 |
水星(Mercury) と 土星(Saturn) の 大接近を撮る 日没後の西天で水星と土星が大接近した。このときの水星の高度は3.026°、土星の高度は2.887°と、とても低い。光度は水星が-1.2等、土星が1.1等で夕暮れの西天だから肉眼で見極めは困難。地平線高くは空気も淀んでいて観察できるか心配されたが、水星は比較的簡単に見つけられたが、土星は水星のすぐ左と見当をつけていなければ見つけることは至難だった 金星(Venus)は-4.6等と際だって明るく、宵の明星(太白星)として存在感を誇っていた Algenib(アルゲニブ)の光度は2.83等、ペガスス座のγ星。ペガススの四辺形を構成するアルゲニブは、2016年に国際天文学連合によってペガスス座γ星として正式に固有名が承認された 次は3/1の夕方。西の低空で細い月と水星が大接近、次の3/2には同じく西の低空で細い月と金星が並ぶ 問題はお天気だが、さあどうなるか ※※※ 閑話休題 ※※※ 鎌倉時代初期の史論集『愚管抄』。作者は天台僧の慈円。承久の乱直前に成立し、乱後に改訂されている。この『愚管抄』巻六、土御門天皇の元久三年(1206)三月二十二日条に次のような記事がある この春三星合とて、大事なる天変ありける。司天の輩大いにおじ申しけるに、その間、慈円僧正、五辻と云いてしばしばありける御所にて、取りつくろいたる薬師の御修法をはじめられたる修中に、この変はありけり。太白、木星、火星となり、西の方に宵々に、すでに犯分に山合に寄りあいたりけるに、雨降りて消えにけり。また晴れてみえけるに、みえてはやがて雨ふりてきえ、四五日してしばし晴れざりければ、めでたき事かなと在りける程に、その雨はれてなお犯分のかぬ程にて、現じたるを、さて第三日にまたくもりて、朝より夜に入るまで雨を惜しみてありけり。いかばかり僧正も祈念しけんに、夜に入りて雨しめじめとめでたく降りて、つとめて消え候いぬと奏してけり。さてその雨はれて後は、犯分とおくさりて、この大事変ついに消えにけり この三合星の変という記事は太白星(金星)と木星と火星が隣り合ってその分野を乱したことを記録している。この天変が現れると天応に大事が起きるというので、慈円僧正が五辻殿でその災いを除くため薬師法を修して雨を祈り、降雨によって三合星が見えなくなり大事変を未然に防いだという記事である。五辻殿は後鳥羽上皇の院御所として元久元年(1204)から使用された邸宅だった。災いの予言は人心を不安に陥れた さて辰星と呼ばれた水星だが、貞和五年(1349)に太白星(金星)と歳星(木星)と集合した。六月二十八日午前四時のことだった。この三星集合は『太平記』巻廿七に「妖怪事付清水寺炎上事天下」として「犯星客星無隙現じければ旁其慎不軽」とあり、不穏な空気を漂わせている 六月十日より太白・辰星・歳星の三星合て打続きしかば、不経月日大乱出来して、天子失位、大臣受災、子殺父、臣殺君、飢饉疫癘兵革相続、餓■満巷べしと天文博士注説す とある これは、あらゆるものは「木」「火」「土」「金」「水」の5つから成り立っているという五行説を五星に結びつけたものである。言うまでもなく五惑星による天文現象はそれぞれの周期の公転によるもので、地球から見た見かけの運動にすぎない。しかし中国では惑星の運動を軌道として把握することはなかったようで、惑星現象は予想できないものとされた このような惑星の運動に関する天文観は近世前期まで続いたが、近世後期になると天文現象を恐れる人も少なくなったようである 元禄元年(1688)に井口常範によって表され翌年に刊行された天文書に『天文図解』がある。国文学研究資料館によって公開されているので関心のある人はご覧頂きたい。同書は日本で「地球」という言葉が初めて登場する書とされている。同書には彗星の出現が回帰現象である可能性について述べられている。これはエドモンド・ハレーが彗星が回帰することを主張するよりも前のことだった さて、肥前国平戸藩主松浦清(静山)が文政四年(1821)から書き始めた『甲子夜話』には文化六年(1809)のこととして次のような記事がある 文化六年(1809)十月十九日、宵間ノコトニテ、月ヲ望ミタル、ハヤ輪モ欠ケタレト゜モ、晴光ハ皎々タリ。側ノ一尺余ニ星在リテ又鮮明ナリ。予オモエラク、常星ニ非ズ。若クハ五星ノ中ナラント、司天館ニ問イ遣リタレバ、答ニ木星ナリ。恒トモ云ウ。同度トテ此事度々アルコトナリ。月ニ迫リ●ルヲ逼近ト称シ、月ヲ貫クヲ凌犯ト称スト。コレ等運行ノ常ナリ。然ルヲ世ノ人ハ近星トテ凶象トス。 同度トハ、月ト星ト同度ト云ウコトナリ。木星ノ分野ヘ月カカリ、南北線直線ニナレバ、何レノ所ニテモ同度トス。星行ハ遅ク、月行ハ速キヲ以テ、会合ハ定マラゾレドモ、時々アリ。月ハ順行ナレドモ、木星ハ太陽ノ遊輪ヲ廻リ、行度ニ順逆アレバ、同度ノ速キトキ、遅キトキアリ。五星トモニ然レドモ、ソノウチ水星ハ太陽ニ近ク廻レバ、四星ノ如ク凌犯ハナシト云ウ。 近世後期の知識人たちの認識を知ることのできる、大変興味深い記事である ---------------------------------------------------- 85mm、ISO400、f1.4、1/3秒、マニュアルWB、Raw 高感度NRはoff、長秒時NRはon、三脚で固定撮影、金生山 SONY α7RM5 + FE 85mm F1.4 GMⅡ 2025年02月25日18時30分 |
最大光度の金星 を 撮る
最大光度の金星を撮る 金生山明星輪寺の明星とは金星のことで、宵の明星(よいのみょうじょう)、暁の明星(あけのみょうじょう)として親しみを込めて崇拝されてきた。虚空蔵菩薩信仰では明星は虚空蔵菩薩の応化とされている。星祭りの対象としては宵の明星は太白星と呼ばれ、暁の明星は単に明星と呼ばれて区別されてきた 地球より内側の軌道を公転する金星は、1年7か月ごとに地球との会合を繰り返す。2025年の金星は1月10日の東方最大離角を過ぎて2月15日に最大光度となり、3月21日の内合を経て以後は明け方の空に回る。そして4月27日にふたたび最大光度を過ぎて6月1日に西方最大離角となる 昨夕は残念ながら雲に覆われたが、1日を経てこの夕は快晴の西天となった。最大光度の金星の明るさは-4.8等級で、普通の1等星と比べてもその明るさは200倍以上と際だっている。最大光度を過ぎると金星は高度を急速に下げつつ3月21日の内合へ向かう この日の金星は土星を従えて、明るく輝いていた ---------------------------------------------------- 35mm、ISO640、f1.4、1秒、マニュアルWB、Raw 高感度NRはoff、長秒時NRはon、三脚で固定撮影、金生山 SONY α7M4 + FE 35mm F1.4 GM 2025年02月16日18時26分 |
欠ける金星 地球のすぐ内側を公転する内惑星の金星は、満ち欠けをする。水星も同様だが、高度が低いため金星の方が観察し易い 上の写真は特別な機材を用いずにとりあえず撮ったものだが、欠けていることが分かる 満ち欠けをする金星の見かけの大きさは、地球との距離によって異なっている ---------------------------------------------------- 400mm、ISO100、f5.6、1/60秒、マニュアルWB、Raw 高感度NRはoff、長秒時NRはoff、三脚で固定撮影、金生山 SONY α7RM5 + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS 2025年02月16日19時01分 |